自律神経とは

　自律神経の役割について解説する前に、まず「神経」とは何か確認をしておきましょう。

神経は脳と体の各器官が互いに情報を伝えあう道のようなものです。

体の内側、外側からのあらゆる刺激は情報として神経を伝わって脳や体の各器官へと送られ、様々な動きや反応を引き起こします。情報を伝える神経は大きく２つに分けられます。

脳から脊髄へとつながる「中枢神経」とそこから全身の隅々へと伸びる「末梢神経」です。

さらに末梢神経は「体性神経」と「自律神経」とに分けられます。

体性神経には感覚を伝える「知覚神経」と、手足などの筋肉を動かす「運動神経」があります。

一方の自律神経は、内臓の働きや血液の流れなど、生命を維持するための機能を司っています。

自律神経は自分の意志でコントロールすることができません。自律神経の働きによって統御されているのは、例えば心臓を動かして血液を全身へと送る、呼吸をする、食べ物を消化し栄養素を吸収する、暑いときに汗を出し、寒いときに体を震えさせて体温調節をするなどです。

私たちの意思に関係なく自律神経は２４時間休みなく働き続けて体の機能を維持しています。

私たちの健康は、体を構成する約３７兆個もの細胞の一つ一つがしっかりと機能することで守られています。細胞のエネルギーとなるのは十分な栄養と酸素です。これらが足りないと細胞がきちんと機能せず、全身のあらゆる器官に不具合が生じてしまいます。とりわけ重要なのが脳で、栄養や酸素の不足により脳細胞の働きが衰えると内臓や各器官の働きも鈍くなります。

栄養と酸素を一つ一つの細胞へ届ける重要な役割を担っているのが血液です。そして血液の流れをコントロールするのが自律神経です。自律神経を整えることで血液の流れがよくなり、全身の細胞の機能が活性化されます。自律神経には心の状態が大いに関係しています。怒りや不安によって心が乱れると、自律神経のバランスが崩れ血流が悪くなります。つまり心と体は自律神経を介してつながっているということです。心の状態が良ければ自律神経のバランスも整い、体の調子も安定するのです。

自律神経は「交感神経」と「副交感神経」に分けられます。

私たちの体を車に例えた場合、アクセルの役割をするのが交感神経、ブレーキの役割をするのが副交感神経です。交感神経が優位になると血管が収縮し、心拍数と血圧が上昇、心身ともに興奮状態になり、アクセルを踏み込んで前進しようという態勢になります。一方で、副交感神経が優位になると血管がゆるみ、心拍数や血圧が低下します。興奮にブレーキがかかり、リラックスした状態になるのです。通常、人間は日中に交感神経が優位になり、夜は副交感神経が優位になります。

　不規則な生活習慣、仕事や人間関係のストレスなど様々な原因により現代人の自律神経のバランスは乱れがちです。交感神経ばかりが優位になると、全身の血流は悪くなり、いつまでも心身の興奮状態が続くことになります。

逆に副交感神経優位の状態が続くと、意欲が上がらず、無気力感や疲労感を招きやすくなります。アクセルとブレーキのバランスが適切に保たれることで初めて、人間という車は快調に走ることができるようになります。

自律神経の乱れは、血流を悪化させることで体や心に様々な辛い症状を引き起こします。

身体的な不調の例では、だるさや疲れやすさをはじめ、血液の循環が悪くなることによる頭痛や肩こり、内臓機能の低下による便秘や下痢、肌荒れなどが挙げられます。

交感神経の過剰優位な状態では、免疫力が低下し、風邪や感染症にもかかりやすくなります。

血管の収縮が続くことで、長期的には高血圧や動脈硬化、さらには脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる重大な病気につながる恐れもあります。

精神的な不調の例ではイライラしやすくなったり、やる気が低下したり、不眠や過眠といった睡眠の異常が現れることもあります。

　自律神経は、背骨にそって全身の各機関に分布されていますので、背骨の状態に大きな影響を受けています。本来、背骨に柔軟性があれば自律神経も正常に働きますが、疲労や緊張によって背骨が硬くなっていれば自律神経の働きに何らかの影響をもたらします。

このように、背骨の柔軟性が保たれた状態を作り出すために身体のケアが必要になっているのです。

自律神経失調症に対する鍼治療は、現代人に多くみられる交感神経の過剰優位な状態をゆるめ、副交感神経のはたらきを高める効果があります。

特に首や肩・背中などに強い凝りが現れている場合、筋肉の緊張を和らげ血行を促進し、ストレス症状を改善していきます。

当院では、自律神経失調症の治療にもトリガーポイント療法などを用いながら行っています。

治療期間は完治まで３カ月。治療回数を８回と定めております。

（勿論、軽症であれば上記期間より短く・少ない回数で治療を終えるケースもあります。）