目に見える歯科的な所見や検査での異常がない原因不明の歯痛や顔面部の痛みを「非定型歯痛（ひていけいしつう）」「非歯原性歯痛（ひしげんせいしつう）」と呼びます。

　現在のところ主な治療法は、痛みのコントロールとして投薬を中心になされており、中でも抗うつ薬や抗てんかん薬による治療が頻繁に行われております。

しかし、当院に来られた患者様の声を聞くと、歯痛に薬の効果を感じなかったといった声を聞くことはしばしばです。　

　ここでは「非定型歯痛」・「非歯原性歯痛」について、当院の症状に対する考えや鍼灸治療によって得られる効果や効能についてお話ししたいと思います。

　非定型歯痛に限らず病院等で「原因不明の痛み」と診断を受けたケースの中に「筋肉」のコリ（トリガーポイント）が原因であったケースがあります。

代表的な例を挙げるとすると「腰痛」です。

一般的には、8割の腰痛が原因不明とされていますが、それはレントゲンやMRIなどには原因が映らなかった為です。

ですが、それは言い換えるとレントゲンやMRIに異常が映らないものが原因の可能性が高いとも言えます。

それは何かというと「筋肉」です。そして筋肉に由来する痛みがあるということです。

一般的に「筋肉」の痛みと聞くと、運動後の筋肉痛などをイメージされる方が多いかと思いますが、実は慢性的な筋肉のコリからも痛みを起こす事があります。

「筋肉のコリ」＝筋筋膜性疼痛です。

その痛みを発する筋肉のコリを「痛みを起こす引き金」という意味から「トリガーポイント」と呼びます。

このトリガーポイントは、レントゲンやMRIなどの画像所見には映らない為、普段の診療で筋肉を触診しない歯科院や病院等で見つけられることはほぼありません。

実際に触れる・関節を動かして正常に動くかを見ないと筋肉の異常はみつかりません。

原因を見つける事ができないケースでは、「心因性」「突発性」や「気のせい」などとされ、適切な治療がなされないまま症状が固定化・長期化されてしまうこともあるのです。

病院等で治らなかった症状が整骨院や鍼灸院で治るケースがあるのは「筋肉に原因がある症状」に対して、適切に「筋肉にアプローチ」することが出来た為とも言えます。

　非定型歯痛の原因が「トリガーポイント」だと述べましたが、次に具体的な筋肉について述べていきます。

顔の筋肉は、主に「表情筋」と「咀嚼筋」のグループからなりますが、非定型歯痛の原因となる「トリガーポイント」は「咀嚼筋群（そしゃくきんぐん）」に生じたものです。

咀嚼筋群とは、物を噛むときに働く筋肉で「咬筋」「側頭筋」「内側翼突筋」「外側翼突筋」の四つの筋肉からなります。これらの筋肉の慢性的なコリが「トリガーポイント」となり、歯痛や顔面痛を引き起こす事があります。

では何故この筋肉が凝るのでしょうか？

全ての筋肉のこり原因は、主に使い過ぎによる「筋疲労」です。

咀嚼筋群の場合、筋肉が疲労する要素の一つに「くいしばり」があげられます。

くいしばりは、スポーツ選手・肉体労働者など普段の生活で力を使う人にも見られますが、スマホの操作やうつむき姿勢で仕事をされれる状態でも起こります。

またストレスが多い方などは、睡眠時の食いしばりもあります。

一度や二度の食いしばりであれば筋肉の疲労は回復されますが、食いしばりが日常化されれば筋肉は回復する暇もなく、それがコリとして蓄積されてしまいます。

そのこりが、痛みを引き起こす引き金＝トリガーポイントとなり、原因不明の歯痛や顔面部痛となるのです。

また非定型歯痛や顔面部痛は、顔面部の筋肉のトリガーポイントから生じるケースもありますが、稀に首の筋肉のトリガーポイントからも起こるケースもあります。

非定型歯痛の症例もご参照ください。

　ここまで非定型歯痛に対する鍼の効果を述べましたが、決して「鍼」だけがこのような効果をもたらす訳でなく、鍼の刺激を受けた結果、身体が上記のような反応を示すと言うことで主役はあくまでも「身体」なのです！

鍼の効果を最大限引き出すためには当然ですが、「食べ物」や「運動」「姿勢」といった生活習慣が大きく作用します！　

　最後に、少しでも「鍼（はり）」に魅力を感じたり、「鍼」に対する抵抗がなくなった方が増えると嬉しいです。そのことによって、鍼が皆様の生活に身近なものとなり、皆様ご自身の健康的な生活の一助となれば非常に嬉しく思います。

　当院では、非定型歯痛の治療にもトリガーポイント療法などを用いながら行っています。

治療期間は完治まで３カ月。治療回数を８回と定めております。

（勿論、軽症であれば上記期間より短く・少ない回数で治療を終えるケースもありますし、重傷であれば長くかかるケースもあり個人差があります。また改善後も予防を兼ねた鍼治療が必要なケースもあります。）

リタ赤坂鍼灸マッサージ整骨院　院長　吉村大樹